クロム還元槽

【目的】

 6価クロムを3価クロムに還元します。

【理由】

 クロムは6価クロムのままでは沈降性水酸化物を作ることが出来ないため、酸性下において重亜硫酸ソーダ(還元剤)を加え、沈降性水酸化物を形成する3価クロムに還元します。

【方法】

 撹拌機で撹拌しながら、pH2.0〜2.5、ORP250mv 以下になるように硫酸及び重亜硫酸ソーダを薬注ポンプにて自動注入します。重亜硫酸にて還元されたクロムイオンは3価であり、これに消石灰を加えると、クロム水酸化物として沈降分離することが可能ですので、この工程の後、酸・アルカリ系排水と合流させます。

【化学反応式】

@クロム還元槽での化学反応

2H2Cr2O7+6NaHSO3+3H2SO4
     →2Cr2(SO4)+3Na2SO4+8H2O
重クロム酸+重亜硫酸ソーダ+硫酸→硫酸クロム+硫酸ナトリウム+水

A凝集pH調整槽での化学反応

Cr2(SO4)3+3Ca(OH)2
     →2Cr(OH)3+3CaSO4
硫酸クロム+消石灰→水酸化クロム+硫酸カルシウム

【注意点】

 重亜硫酸ソーダ単体を使用したままでは、常に理論値より過剰な量を添加せざるを得ず、このことは凝集工程にて沈降性を悪くしたり、排水基準の沃素消費量の規制値を遵守出来なくなったりします。
 そのため、重亜硫酸ソーダの使用量をなるべく理論値に近づける必要があります。弊社ではpHとORPとの相関の下に、プログラマブルコントローラーによる自動添加を使用する事によって、過剰還元剤の解決の方向としました。また、多段還元をすることにより、理論値に近い反応を行い過剰還元剤を少なくします。さらにそれでも発生する若干の過剰還元剤は、沈降分離をし、さらに最終pH調整槽においても対策をとります。
 沃素消費量に関しては、最終pH調整槽において、pHとの関連において過剰重亜硫酸ソーダの除去を行います。
 またクロムの還元方法の併用策として、重亜硫酸ソーダの使用量を理論的必要量の8〜9割り方とし、残った6価クロムは、硫酸酸性下にて保存された硫酸第1鉄にて還元します。硫酸第1鉄は理論通りに酸化されて硫酸第2鉄となります。ORP計による自動制御が可能ですが、それでも残留した硫酸第1鉄はアルカリ性下において速やかに硫酸第2鉄となり、硫酸第2鉄は沈降性のよい水酸化鉄となります。これは残留シアン・共沈等にも効果があり、矢部方式と呼ばれています。